競技のルール
エンデュランス競技は外乗のように野山を走行しますが、競技である以上、ルールがあります。
これを理解し遵守しなければなりません。

ルールには大きくわけて3つあります。
・一般規程
・競技規程
・獣医規程

競技規程の基本は国際馬術連盟(FEI)の規則です。
これは世界中で遵守されているエンデュランスの競技規則です。
FEI公認競技(CEI)に参加する場合は、このルールを遵守する必要があります。

日本国内の公認競技会では日本馬術連盟(JEF)の規則を遵守する必要があります。
JEFの競技規則はFEIのそれを訳した形で構成されており
「日本馬術連盟 競技会関連規定集」として販売されています。
これにはエンデュランス以外の競技の規定、競技以外の規定についても網羅され、
毎年更新されています。
JEF公認競技に参加する場合は、このルールを遵守する必要があります。

トレーニングライドはJEFのルールに準じて行われます。

競技ルール以外の一般規程、獣医規程では、大会の開催基準や獣医事に関する専門的な規則があります。
競技規程の主だったポイントを、競技会の流れをご紹介しながら見てみましょう。


競技会の流れ
公認競技を実施する競技会は2日間で開催される事が多いです。
主な大会は、北海道では(土)(日)の2日間、山梨県・静岡県では(金)(土)の2日間で開催されています。
全日本エンデュランス選手権は(金)~(日)の3日間、山梨県では(土)のみで開催する競技会もあります。
ここでは、2日間で開催される競技会の流れを見てみましょう。

<1日目>
-入厩
各クラブから馬が大会会場に馬運されてきます。
参加できる馬の年齢は3歳以上、公認競技では5歳以上です。
馬インフルエンザワクチンの接種は、規程を満たす必要があります。
馬の健康証明手帳やJEF公認競技では乗馬登録証、FEI公認競技(CEI)ではFEIパスポートも忘れず持参してください。
(借馬の場合は、馬のオーナー、クラブに確認しましょう)
馬体と手帳は1頭ずつ照合されます(馬体照合)。
-獣医検査
第1回ホースインスペクション(出走前獣医検査)といい、馬が翌日の競技
に適しているか、健康状態、歩様など全般にわたってチェックを受けます。
馬の1分間の心拍が64拍以下である事が求められます。
この検査をパスした馬のみが翌日スタートする事ができます。
スタートする馬の尻の両側には、ライダーのゼッケン番号と同じ番号が書かれます。
全日本選手権競技やCEI競技など、ライダーと馬具をあわせて重量の規程がある場合は、この時に検量が行われます。
-選手打合会
実行委員会と選手、役員が全て参加して、大会中の注意点などを確認
します。
走路やルールに関する疑問などが残らないよう、必ずクリアにする必要があります。
また、天候などの理由により、プログラムに記載している内容が変更となる場合もありますので、必ず参加しましょう。
-懇親会
関係者のみが参加する事ができ、競技会後に行われる事もあります。
他のライダーやクラブなど、知己を増やす絶好の機会です。

<2日目>
-スタート前
各厩規程にあっている服装や馬具である事を再度確認します。
走行制限時間(カットオフタイム)も確認しておきましょう。
-スタート
同じ種目の全人馬が一斉にスタートします。
指定されたスタート時間から15分以内にスタートしないと失権となります。
スタートとゴールは騎乗していないと失格です。
-走行中
馬の状態などにより、引き馬での走行もOKです。
ウォーターポイントは10km毎に設けられており、スタートした人馬は、ゴールするまでクルーポイント以外での援助は受けられません。
ただし、落馬、放馬などの緊急時は、どこででも、誰からでも援助を受ける事ができます。そういうシーンを見かけたら、手を差し伸べるホースマンシップが大切です。
前を行く馬を追い越す、などで、馬同士が近くなる場合には、場所、タイミングな細心の注意を払ってください。
追い越す側は「右から抜きます!」、追い越される側は「了解です!」といった、明確なやりとりが必須です。

-ゴール
クルーと一緒に、獣医検査を受けるべく、馬の手入れをします。
馬装を全て外し、指定された時間内に獣医検査場へ入れなければ失権となります。
各レグではスタートから獣医検査場に入るまでの時間が「走行時間」です。
獣医検査では健康状態、歩様など全般にわたってチェックを受けます。
心拍は64回/分以下である事が求められます。
この検査にパスしなければ、次のレグにはすすめません。
次のレグがある場合は、指定された強制休養時間を経て再度スタートします。
最終区間は、ゴールに入った時間までが走行時間となり、ゴール後の獣医検査では3名の獣医による投票が行われ、結果パスであれば「完走」です。

-ベスコン審査
正確には「ベストコンディション賞」といい、ゴール後に、該当する馬のみに行われる審査の事です。
「ベストコンディション賞」とは、長距離を走りぬいた馬の中から最もコンディションの良い1頭に与えられるもので、順位とは別に種目毎に表彰され、この賞の受賞は選手やクルーにとってはとても名誉のある賞です。
人馬ともに元気に走りぬく事、早くゴールして順位を上げる事よりも、良いコンディションで完走する事が大切であるエンデュランス競技、ならではの賞ですね。
この賞を設定している種目は競技会毎に異なりますので、選手打合会などで確認しましょう。
-順位
種目毎、距離毎に走行時間が短い人馬が優勝となり、走行時間順に順位がついて、完走した全人馬が表彰されます。
トレーニングライドでは順位はつきませんが、完走証を授与されます。


獣医検査とは?
エンデュランス競技では馬に長距離の走行を求める為、獣医検査の項目は多岐にわたり、他の馬術競技では見られない入念な検査が実施されます。
獣医(Veterinarian)が検査する場所(Area)、通称Vetting Areaと呼ばれる場所へは、競技会中、何度か足を運びますが、おそらく馬にとっては見慣れない場所であり、見慣れない人がいる場所です。

例えば…
・馬が仲間の馬と離れ、見知らぬ人に囲まれても落ち着いて立っていられる事
・口腔内の検査時に、いやがって頭をふったりせずおとなしく検査を受けられる事
・検査に必要な触診、身体の各所を触られてもおとなしくしていられる事
・引手を緩めた状態で速歩をし、指示により止まれる事
競技会までに馬がこの場所で獣医検査を受ける事ができるよう、準備が必要です。

また、獣医検査そのものの内容は変わりませんが、検査を受けるタイミングで意味合いが異なるのです。

出走前獣医検査
この検査に合格しなければスタートできない
区間ゴール後の獣医検査
この検査に合格しなければ次区間のスタートはできない
最終ゴール後の獣医検査
この検査に合格しなければ「完走」とならない

獣医検査で求められる項目は、「歩様」「代謝」に代表される馬の全般的な健康状態です。
また、明確な数値として「1分間の心拍が64以下」、これを上回っている状態では、合格しません。
検査はその瞬間での馬の状態を表しています。あらかじめ学んでおく事が大切です。



大会要項
エンデュランス競技会の実行委員会は、少なくとも大会の1ヶ月前までに「実施要項」という書類を公示しなくてはなりません。
要項には開催される競技の種類や走行条件、人と馬それぞれの参加資格、参加費用、競技会のタイムスケジュール、入厩条件などが記載されています。

タイムスケジュールの中でも大切なのは、「スタート時間」「カットオフタイム」です。
長い距離を走るエンデュランス競技では「走行時間」、つまり、最後のゴールを切る制限時間が決められているのです。

一定の乗馬スキルとトレーニングを経てスタートする人馬に、一定の時速以上での走行を求めるという事、これが要項の中の「走行条件」です。

事前に目を通しておく事で、馬のトレーニングの進め方や競技会当日の動きを知っておきましょう。